『カルラのリスト』
La liste de Carla
2006年スイス映画 95分
脚本・監督:マルセル・シュプバッハ
製作:ジャン=ルイ・ポルシェ、ジェラール・ルイー
出演:カルラ・デル・ポンテ(検察官)、ジャン=ダニエル・ルッシュ(政治顧問)、フローレンス・ハルトマン(報道官)、パトリック・ロペズ=テレス、アントン・ニキフォロワ、ハビエル・ソラナ(EU共通外交・安全保障政策上級代表)
2005年3月。旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)の女性検察官カルラ・デル・ポンテは、オランダのハーグを拠点に旧ユーゴ紛争の戦争犯罪人を追っていた。着任してから6年が経ち、ミロシェヴィッチ元大統領は起訴できたものの、ラトコ・ムラディッチとラドヴァン・カラジッチを始めとする10人がまだ逃亡中のままで、当事国のセルビアからは協力が得られず苛立ちを隠せないでいた。7月11日、ボスニアのポトチャリ。8000人のイスラム教徒が犠牲となったスレブレニツァの大虐殺から10年目の式典が開かれる。カルラはムラディッチ将軍とカラジッチ大統領の2人が逮捕されていないからと出席しないことにするが、犠牲者の母親の会の代表は失望の色を隠せない。9月26日、夏の間に3人が逮捕され、カルラは報道官のフローレンス・ハルトマン、政治顧問のジャン=ダニエル・ルッシュらチームの面々とともにスイス政府の専用機でバルカン半島をめぐる。クロアチアのザクレブではサナデル首相と会談してゴトヴィナ将軍の逮捕に向けて全面協力を要請し、セルビアのベオグラードではコシュトゥニーツィア首相にムラディッチの身柄引き渡しを求める。カルラは祖国の英雄であるゴトヴィナ将軍の逮捕に協力的ではないクロアチア政府に失望の意を表明するが、帰路に着く直前、国外のとある場所にいることが分かったという連絡が入る。10月3日、ルクセンブルクでEU理事会が開かれ、クロアチアとトルコのEU加盟が協議される。カルラはそこでクロアチアが戦争犯罪人逮捕に向けて協力的であると評価する。セルビアではムラディッチ逮捕に協力的なソラン・スタンコヴィッチが新たに防衛大臣に就任することになり、カルラたちは希望を持つ。ところが2ヶ月経っても進展のないまま、カルラたちは12月15日、ニューヨークで開かれる国連安保理に向けての準備を進めていた。12月8日、ベオグラードに向かった一同のもとにゴトヴィナ逮捕の朗報がもたらされる。
旧ユーゴ国際刑事法廷の主任検察官カルラ・デル・ポンテの1年を追ったドキュメンタリー。
本篇では特にセルビアのカラジッチ大統領、ムラディッチ将軍(しかしこの2人、漫才コンビみたいだな)、そしてクロアチアのゴトヴィナ将軍の3人に焦点が当てられる。
カルラは信念の人である。
旧ユーゴ国際刑事法廷には逮捕能力がないため、もっぱら各国政府の協力によって戦争犯罪人を逮捕していくしかない。ところが、当事国からは協力を得られず、犠牲者の遺族からは責められる。
その板挟みに遭いながらも、彼女は決して諦めない。
諦めたらそこで終わりだと知っているから。
子供の頃から正義感が強かったという本人の言葉があったが、正義感だけでここまでできるものではない。
本作では彼女の私生活は一切出てこない。
スイスの自宅で週末を過ごすというナレーションはあっても家が映し出されることはない。
世界で一番厳重な警護をつけられている女性と言われる彼女のことだから、家族に累が及んではいけないということもあるだろうけど、ほとんど私生活と呼べるものがないのだろう。
この映画を作った人たちの怒りもひしひしと伝わってくる。
最後の安保理でのカルラの演説に合わせて、大虐殺の犠牲者の遺族の顔やずらりと並んだ棺桶が映し出される。その映像が何よりも雄弁。
しかしアメリカも空爆だけは得意だけど、こういうことに関しては全然協力的じゃないのね。
ちなみに旧ユーゴ国際刑事法廷は2010年に閉所の予定。カルラの任期は2007年9月に終了するという字幕が出るが、12月(つまり今月いっぱい)まで延長されたそうな。
★★★