
この日、一番最後に回ったのはDel Dotto Vinyard。ここはメインのワイナリーがNapaのダウンタウンに近いAtlas Peakというところにある。
1990年代中盤からChardonnay, Pinot Noir, Cabernet Sauvignon, Cabernet Franc, Merlot and Sangioveseなどを作っているファミリーワイナリー。近年は赤を主力に置き、1885年に手作業で掘られた厳かな洞窟内の樽から直接飲ませてくれるツアーが売り物だ。
今回訪れたのはこのメインサイトではなく、 →続きを読むをクリック
11月にオープンしたSt.Helenaにある新サイト。ここは総大理石造りのロビーとレンガなどで丁寧に組まれたケイブにまず度肝を抜かれる。館内にはオペラの音楽が流れ、とにかく荘厳な雰囲気に圧倒される。
まあ、音楽に関しては、アジア系の僕にとってはもうちょっとボリューム下げてくれてもいいかな、と思ったほど。でもイタリア系の人って僕たちより大音量で音楽を流すのが好きみたいだから、まあご愛嬌だな。

ツアーは午後3時からと聞いていたが、到着したのは同2時45分。しかしほかに参加者がいなかったのか、それとも少人数グループが基本なのか、僕とHさんの2人だけでツアーを出してくれた。担当してくれたのは奥さんが日本人というDanielさんという男性。時折片言の日本語を交えて丁寧に案内してくれた。
実はこの日回った3箇所のうち、正直ここはあまり期待してなかった。ウエブサイトなどで見て、建物はそれなりにきれいだとは思っていた。でも肝心のワインの味に関しては「どうせ仰々しい建物を売りにしてるだけで、そんなに大したことないんだろう」と、タカをくくっていた。
ですがみくびってごめんなさい。最初にテイスティングカウンターで出してくれたSangioveseをすすりこんだ瞬間、態度を改めてしまいました。許してください。「鼻であしらってやろう」的な態度をとった僕が悪うござんした。降参です。土下座です。
どんなに建物がコ汚くても係員の対応がぞんざいでも、ワインの味がいいところには脱帽して態度が改まってしまうもの。しかしここは建物はすばらしいし、コ馬鹿にしていたワインがめちゃウマ。軽くて繊細でかつ深みがあって香りがいい。おまけに係員も丁寧だったので、心の中ではこのワイナリーのランキングがグ〜んとアップして行ったのでした。

Sangioveseを終えた後、Danielさんはおもむろにカウンターの下から、透明な牛の角のような器具 (Tube) を出してきた。いよいよ洞窟内のバレルテイスティングだ。
ツアーに参加しないとカウンターテイスティングのみで、簡単なつまみとボトルワインの試飲はできる。しかし売りの樽から直接飲めるバレル・テイスティングは、ツアーを予約しなければならない。ツアー料金はかなり高額だが、ここはその価値が十分あるとあとで気づいた。
ロビー奥のカーテンで仕切られた中へ入ると、内部はほとんど真っ暗。ロウソクがそこここに灯されてはいるが、目が慣れるまでがかなり暗く感じる。しかしよく見渡すとトンネルは長さ約100mあり、レンガと大理石で丁寧に作られている。洞窟の左右には樽がずらりと並んでおり、随所にバレルテイスティングができるようなステーションがもうけられている。
最初に一番奥まで導かれ、Zinfandelを飲ませてくれた。これはステンレスタンクからだったが、程よく冷えて最初に飲んだSangioveseと同じく、すごくおいしく感じた。
ここから入り口に向かって戻る感じで、バレルテイスティングが始まった。横置きにされた樽の腹に穴が開いており、そこにDanielさんがTubeを差し込み、適量を取り出す。グラスに少しずつ流し込んでくれて、ほの暗いトンネル内でゆっくりテイスティングできた。

樽から出してくれたばかりのワインは室温よりちょっと低め。しかしそのやや冷たい味わいがすごくおいしく感じる。樽のステーションを次から次へと移り、数種類のカボネーやメルローのほか、オーナーの名前を取った「The Dave」というブレンドの赤などを次から次へと味あわせてくれる。
特に面白かったのは、同じワインをフレンチオーク製とアメリカンオーク製の別々の樽に入れて熟成し、その2種類をサイドバイサイドで飲み比べさせてもらったこと。同じ原酒なのに樽によってこうも違うのか、と思うくらい2つはまったく別の味わいに仕上がっていた。
気に入ったワインがあれば、樽の横に置いてある札を取って最後に買って帰ることができる。次から次へとワインを味合わせてもらったが、すべてを試したわけではない。しかしあれもこれもと頼めばすべて飲ませてくれるはずで、全部15種類近くはあると思う。ナパで一番大量に試飲させてくれるワイナリーの1つだろう。好きな人ならやめられないはず。

最後は洞窟から出たところにあるテーブルで、ポートとカボネーフランク、カボネーを飲ませてくれた。しかしここへ来てさらにびっくり。Danielさんがテーブル下から出してくれた大皿にはチーズが3種にプロシュート、ハム、サラミ類などが盛られてド〜んと出てきたほか、アーモンドやクラッカー、ダークチョコレートなどがこれでもか、というくらい出された。
これらをつまみにカボネーフランク、カボネー、ポートなど数種を試し続ける。しかし罪やな〜。今回は試飲料がどこも結構な金額だったので、ワインは買うまいと決めていた。
でも、でも、でも…。このテーブルで飲まされたカボネーフランクにはまいってしまった。たぶん、今年回ったワイナリーの中で3本の指に入るくらいのお気に入りになってしまった。1本$58。トレイダー・ジョーズの$2ワイン(2バック・チャック)を家で飲みつけている身としては、チャック29本分やんけ、と下卑た計算が頭の中を駆け巡った。
だがこれは買う価値があると即座に判断し、迷わず1本買ってしまった。2005年ものカボネーフランク、お買い上げ〜。こんなワイン買うなんて年に1回あるかないかだ。

しかしDanielさんは相当な“悪人”だった。このあとに同じく2005年物のカボネーを出してきやがった。まるでメルローのようにまろやかで太く、深い味わいのカボネーに致命傷を与えられてしまった。まるでカラータイマーが点滅し始めたウルトラマンに対し、とどめの一撃を加えてきたゼットンのように、このカボネーは僕を襲ってきた。
もともとメルローが大好きなのだが、かなりそれに近い味わいのこのカボネーはもう犯罪です。1本$65なり。かなり迷ったが、カラータイマーが点滅している身としてはもう正常な判断ができない。気づくとこのカボネーの注文書にもチェックマークを入れてしまっていた。
あ〜、Del Dottoのバカバカバカ。Danielさんのあんぽんたん。買わずには帰られない状況を演出しやがって、不肖中村、恥ずかしながら年に1回の大出費でしたが、納得の行くパーチェスでした。
そうそうそう、係りのDanielさんを気に入ったのがもう1点。残念ながらこのワイナリー内部は、テイスティングの厳かな雰囲気を乱さないために写真撮影が基本的に禁止されている。しかしDanielさんに聞いてみると「僕は何にも見てないよ〜ん」とすっとぼけてくれたので、ロビーや洞窟内で数枚写真を押さえることができた。今度お客さんを連れて行くときには、彼を指名しよう。
今回のリサーチで回ったワイナリーを総括すると、Far Nienteはシャドネーとデザートが秀でていて、ツアー内容が特に充実しておりウルトラ級のツアーに問題なく使えるものだと思った。

半面、Nickel & Nickelはおいしいことはおいしいのだが、他の2つに比べると味は1ランク下に入るかもしれない。ただテーブル・テイスティングの雰囲気がよくシングル・ビンヤードというこだわりを持っているので、玄人向けのツアーとしては十分使えるワイナリーだと思った。もちろん、Opus Oneよりはるかに安くおいしく感じた。
さいごのDel Dottoは期待してなかった半面、ツアー内容とバレルテイスティングの充実度、ワインの味のよさに思わず失禁状態になりかねないところまで追い込まれた。これは自分的にはCardinale、Quintessaと並ぶ今年の3大ワイナリーの1つだと思った。
年明けにはJoseph PhelpsとShaferの2大巨匠との対決が待っているのでまだ最終判断はできないが、これらと組み合わせてさらに1ランク上の「ウルトラ級ワイナリーツアー」をプランしようと思っている。いや〜、こんなに満足したリサーチも久々。感涙モノでした。
ご同行いただいたHさんは、僕の目が届かないところや気づかない味、再考したほうがいい点などを指摘してくれて助かった。ありがとうございました。
終わり。

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