哲学者で詩人だった矢内原伊作は、1955年11月、パリのジャコメッティのアトリエを訪ねた。二人はその後交友を深め、ジャコメッテイは矢内原の彫像を作る事に熱中する。矢内原はジャコメッティの求めに応じて6年に渡り断続的にアトリエ訪ねて、モデルになった。
「ジャコメッティとの日々」は、その6年の歳月の間に矢内原がモノクロで撮影したジャコメッティのアトリエを記録した本である。ジャコメッティの肖像、制作風景、妻のアネット、アトリエの壁、デッサン、アトリエを訪ねた作家ジャン・ジュネ、本棚、故郷スイスの風景、ジャコメッティの母など、薄い写真集だが対象は多岐に渡る。
矢内原は、写真集最後に納められたエッセイを次の言葉で締めくくった。
「私の手もとには思い出とともに写真がのこった。」
写真集はこの世に数多く存在する。しかし、6年に渡る交遊の中で深められた友情を記録した、哲学者の手になるこの写真集を私は非常に愛している。本来の写真の姿、それが此処にあるように思えてならない。

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