「ミャンマーの夢が実現した、そのあとにくるものは悪夢か−アメリカの地方紙記事とビルマ人の反論」
世界
数日前にアメリカ・ミネアポリスの地方新聞に、一つの記事が載りました。「ミャンマーの夢が実現したあとに来るものは?」というタイトルの記事は、デニス・グレイという人が書いた署名入りの記事です(http//www.twincities.com /national/ci_7277897)。 民主主義にもとづいた政治の経験を持つ指導者がいないなかで、軍事政権が急激に崩壊すると少数民族の対立が激化し、国が分裂するという、これまで軍事政権が少数民族に加えてきた苛烈な弾圧を不問に付すような中味です。
この記事をかいつまんで紹介します。「描きうる最良のシナリオは、ピープル・パワーが軍事政権を倒し、民主主義の’イコン(偶像)’であるアウン・サン・スーチーが解放されることである。しかし、そのあとには、ビルマの’悪夢’が待っている。民族主義による反乱がふたたび起こり、国の組織が破壊され、民主主義の経験のない指導者たち同士の衝突と経済の崩壊が待っている。1962年以来、真の文民統制を経験していないために民主化への移行は非常にむつかしい。この混乱を避けるために、軍は維持される必要がある。この同じ理由から、隣接する国家であり、軍事政権の後ろ盾でもある中国が安定を強調し、ゆるやかな体制変更を望んでいることについて、他の東南アジア諸国も共通した見方をしているのだ。... いちばん難しい問題は、いまのミャンマーを悩ませている少数民族の反乱を、あらたに引き起こさせないようにすることだ。長らく続いている軍事政権とカレン族など少数民族との間の憎しみ、緊張と戦闘のもとで、軍政が急激に崩壊すれば国の崩壊が起こる可能性がある。」
これにたいして、翌日にはビルマの新聞イラワディが反論の記事を掲載しました(
http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=9133)。 イラワディが問い合わせた少数民族の指導者、経験ある政治家、学者のだれもが、この記事は根拠のないもので、その見方は軍事政権と同じものだと反論しています。カレン族の指導者マン・シャ(Karen National Unionの代表)は、ビルマ内の衝突は、少数民族間の争いではなく、軍部との闘いでもなく、ただ、軍事政権にいる支配者とのたたかいなのだと語っています。別の少数民族アラカンの指導者も、適切な権利を得るためにたたかっている少数民族のなかで、暴動や反乱をふたたび起こそうとするものはいないと語っています。アウン・サン・スーチーひきいるNLDや少数民族、軍政に反対する誰もが、暗礁に乗り上げた国家の問題を解くために、軍政との対話を求めてきました。カチン独立組織(KIO)の指導者は、自分たちが求めているのは自治と民族間の等しい権利であり、それが得られれば、何も問題は残らないということです。事実、1961年に設立されたKIOは、1990年に軍事政権と休戦協定に調印しているのです。ビルマの政治改革と民主化が達成されたあかつきには、少数民族と政府が争う理由がなくなるのです。運動の指導者たちは、最大の問題は、タン・シェ将軍であり、彼の取り巻きのなかの何人かは、反政府活動グループとの話し合いに応じることもありうるという見方を示しています。
冒頭で紹介した新聞記事では、これまで高い教育をうけながら海外に亡命したビルマ人が、軍政が崩壊したあとに帰国して国の建設にたずさわれるかどうか不明だとしていますが、これについてラングーン大学の教授でいま海外に亡命している人の話を紹介しています。たとえ新しい政府のなかでの職がえられなくても、帰国してひとびとのためにボランティアとして働きたいと語ったということです。日本にも大勢の亡命ビルマ人が働いていますが、彼らがいま必死で立ち上がっている姿からは、この教授の言葉が真実であることを疑う余地はありません。
海外の’専門家’が、ビルマに来ることもなく、深い理解もなしにビルマについてあれこれとコメントすることに、ビルマの人たちは苦い思いを抱いているようです。ビルマのジャーナリストは、このようなコメントをしている者は、軍政の流す宣伝を’買っているだけ’だと切り捨てています。現軍事政権は、人種差別にもとづく武力弾圧をおこなっています。以前の支配者ネ・ウィン将軍時代、少数民族指導者に高い地位を与えていたこともあったということです。アラカン、カレン、シャン族指導者で政権のなかにいた者もあったそうです。自分たちはビルマの一部であり、ビルマ人であり仏教徒であることを誇りに思うと語るアラカンの人の話も紹介されています。いまだ軍政とたたかっているシャン族のスポークスマンは、現政権が崩壊すれば、よりよい政府が作られるだろうと述べています。’いまこそ、我々すべてが手をつなぎ、倒れかけている軍政に代わるより良い政府を打ちたてよう’と呼びかけています。
マスメディアは、制裁を呼びかける欧米国家とそれに反対する中・露・印の対立であるように報道しています。しかし、ビルマの人からみれば、’安定’という名のもとに軍事的抑圧を認め、自国の利益を優先させる大国の姿勢には、大きな違いがないのかも知れません。

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