ヒトリゴト 投稿者:S 投稿日: 6月29日
だからさあ
好きなとこだけ見ればいいんじゃないの
トゲなんて飲み込んでも
どうってことないなら
話しは別さ
キミのトゲ・・?
もう免疫できちゃって・・
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姪 投稿者:S 投稿日: 6月29日
姪っ子が生まれた時
病院のミスから
感染症にかかっていた
「もしも後遺症が残ったら俺は病院を絶対に許さない」
と義兄は畳を睨みつけ吐き捨てた
祖母は毎晩近くの神社にお百度を踏みに行った
心配した後遺症もなく
退院した姪を見たのは
何かの祝い事だった
生後三ヵ月の赤ん坊は
親戚の笑顔に囲まれ
事故を起こした病院の噂話に
ひとしきり花が咲いた
三歳になった歳の暮れ
遠方から到着した親戚連中は
鉢盛りを肴にして昼間から酒宴が始まる
その家の男達が酌を務め
女達は駒鼠のように大掃除と
料理の仕込みに追われていた
この辺りの農家はどこも似たような
暮れの光景だったろう
数秒で障子を綺麗に剥がし
鍋にふやかした御飯糊で
手際良く張り替えてゆく義母を眺めながら
義姉達と料理を手分けした
鯛の刺身を酒と昆布でしめ
淡雪をアルミのトレーに流す
晦日と正月料理の仕込みが一息つくと
私は姪を手元に呼んだ
忙しい大人達に
放ったらかしにされた長い髪は
ところどころが毛玉になっている
綺麗に櫛で梳かし
左右対象に編み込み
ピンで止める
可愛らしくなったねと声をかけると
少しはにかんだように笑った
再び実家を訪れた時には
姪は七歳になっていた
朝目覚めると
小さな手で器用に
髪を二つに分け
三つ編みにして
ゴムでくくる
少しギザギザな分け目の
誇らしげな表情に
ひかれてしまうのは
女の子を授からなかった
無いものねだりだろうか
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ウィルソンと僕と 投稿者:仔梟 投稿日: 6月29日
それでも太陽が昇ると幽霊船の灯りは消える
「今朝はよく晴れたもんだ、何か漂着してないか、
どれ、ウィルソン、海岸を見に行こうか。」
白い球体を手にとって男は出かける。
鬱蒼と繁った南洋の木の森を、男は木の皮で作った靴を履いて抜ける。
今日の朝ごはんは何がいいかな、蟹は嫌だ、
何故、だって君は食べないじゃないか、
僕は何も食べやしないけどさ、蟹は嫌だね、
だって、なんだか見飽きたもの、そうだ、
じゃあ、何か道具が漂着してたら、料理をしよう、
だって、籠編みにもちょっと飽きてきたし。
そうだね、それはいい、と微笑むのは、
白い顔のウィルソン。
海岸線は真っ白で、海は透き通る青緑色、金色の網を太陽は投げて心を誘う。
「でも、昨日は水平線にちらりと、灯りが見えたような気がするんだよ。
ねえ、ウィルソン、もうひとつの島が、あると思うとなんだかいい気分だ。」
球体を抱えたまま、男は海岸線をぶらぶら歩く。
あ、あれは何だろう、ねえ、ウィルソン、
なんだかフライパンのように見えるんだけど。
そんな馬鹿な、でも、そう見えるね。
南の海には色んな漂流者がいる。
そしてここには球体に話しかける者。
とはいえ、これは僕の海図の上での話で、
誰かの南洋はきっともっときれいだろうね。
「ねえ、ウィルソン、見てごらんよ、瓶詰めの手紙だ、他の人間の言葉だ。
海水が少し染みて滲んでいるけど、ほら、見てみなよ、きれいな詩だ。」
良かったじゃないの、そうウィルソンは微笑み、
じゃあ、君も何か流してみたら、と云う。
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素肌と海 投稿者:S 投稿日: 6月29日(水)
もしもわたしが
南洋の孤島に
一人きりで
住みついたら
何のためらいもなく裸になり
クリスタルブルーの海を
素肌で楽しみたい
お腹が空けば森のバナナをちぎり
眠くなれば満天の星空に
かけられたクロスを眺め
砂浜に横たわる
深呼吸をしようよ
風が素肌を撫で
波の音に包まれる
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夏の朝に 投稿者:S 投稿日: 6月29日(水)
誰の言葉なのか忘れてしまったが
物事は難しく考えると難しくなり
簡単に考えると簡単になる
そう言った人がいた
歩いてゆく道が
行き止まりになると
不思議にその言葉が
頭に浮かび
わたしは眼に映る景色を
リセットして眠る
朝の涼しい空気が
身体の内側を吹き抜け
大きく伸びをする
風が背中を押して
わたしの足取りは
軽くなる
今日という一日は
まだ始まったばかり
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テンペスト、を祈る 投稿者:梟 投稿日: 6月29日
そして星は遥かに遠い太陽ではないか
雨中に呟く旅人の名をパピヨンと云う
オランダ船は遥か遠方になお彷徨する
戯れにランタンを上げ下ろしする旅人
北極星を見失ったのは南にいるからだ
大丈夫、良いコンパスを持っている筈
我々の立つ土地は丸く水平線が存在し
いずれ嵐と幽霊船は去るのであろうが
同じ理由で昼と夜もまた球を二分する
あたかも原初の人の如くにまるい大地
彷徨せる悲しき船よ、知っているのか
洋上彼方に聞く常に太陽の照る土地を
噂では氷が閉ざすとも緑の土地だとも
その土地が楽園であったら教えてくれ
そのほの灯りのランタンを振り返して
その甲板には青白い船員達が見えるが
なおシャンデリアが豪華な船室に残り
埃塵の下にかつての栄華を忍ばせよう
旅人は雨を受け岬にて小さな灯を振る
黒髪の中を流れる雨水に言葉が絡まる
探索をそれは繰り返すのだろう、唯一
上陸を許された機会に見る愛を求めて
いずれ伝説を愛した乙女も現れようが
オランダ船よ、海に沈むことを望むか
哀しい歌劇の救済を願わずにはおれぬ
海上の嵐に戯れにランタンを振る旅人
その岬は絶海の孤島であるかもしれず
だが旅人は波の声を聞いたことがある
人間は誰も孤島ではなく、大陸である
故に哀しみのオランダ船よ、幸あれよ
旅人はマントを引きずり上げ筏を探す
旅人の名はパピヨンと云い、流刑囚だ
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殻を破いて 投稿者:minstrel 投稿日: 6月28日
私の居場所は何処にも無い
錨をなくした船は港に留まることは無い
ただ非現実の空想を漂うばかり
一条の光に憧れても迷いは消えない
夜空に星が輝けるのは
太陽という名の主役が退いたから
一日一日はただ過ぎていく
されど人は老いと共に経験を得て
刹那の感情と一緒に後悔の種を蒔いていく
見苦しくても
傷つけてしまっても
何かに縋って生きていく
変わらないものなど何も無い
澱んだ空から光がさすように
その翼は再び空を舞うだろう

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