引っ越してきたボクは、近所の洋館が気になった。
時々その3階の窓から白い手が見えた。
ほっそりとした白い手は外に向かって振られたり、窓ワクを叩いたりしていた。
いろんな人から話を聞いてみると、その部屋にはボクと同じ年の少女がいるということだった。
彼女は病弱で、外に出られない。
白い肌をした美しい少女だということだった。
白い手を見て、ボクはどうしても彼女を見てみたくなった。
でも彼女に会う方法はなかった。
洋館には彼女の両親が住んでいたが、近所づきあいのない人たちだったのだ。
彼女を一目見たい。
ボクは洋館のそばを通るたび、その思いが強くなっていった。
そして彼女の窓に向かって伸びている、木の枝に気づいた。
そうだ、あの木に登れば、彼女の部屋をのぞけそうだ。
ボクは洋館の塀の崩れたところを通り抜けて、木によじ登った。
彼女の窓がすぐそこに見える。
彼女を一目見たい、その一心でボクは枝をつたって窓に近づいた。
そして白い手が見えた。
白い手がボクの方を見た。
慌てたように白い手がカーテンを引いた。
その時ボクは見た。
白い手は指から肘までしかなく、それだけが生き物のように生きていたのだ、
まるで大きなサソリのように…。