「はい、こちち電話心の相談、堂出萌です」
「もう、聞いて、彼ったら浮気してるの。許せない」
「許せませんか。浮気してるんですか」
「そうよ。しかも私よりも不細工なやつに」
「不細工なんですか。それはなおさら許せませんね」
「しかもアヒルなんだから」
「げっ、アヒルと不倫ですか。そりゃすげぇ。獣姦じゃん」
「だからもう別れようと思うんだけど、どう思います」
「どう思います、と私に聞かれるんですね。でも決められるのはあなたご自身なんですよ」
「それはわかってるんです。でもそちらの『相談しましょ、そうしよう』というキャッチフレーズは嘘なの」
「嘘ではありません。ご相談にはのりますが、離婚したらいいかどうかという判断までは」
「あ、そう」
「ちなみに浮気相手には、彼とかいないんですか」
「いるのよ。立派なアヒル野郎が」
「そしたらあなたがその立派なアヒル野郎と浮気しちゃえばいいんです。喧嘩両成敗というやつで」
「それってちょっと違うと思うけど。でもそんなことしたら子どもたちの夢を壊すことになるし」
「子どもさんがいるんですか。でも子どもの夢より、ご自分の気持ちです。自分らしく、自分に正直に生きて下さい。一番大切なのは、あなた自身なんですから」
「そうか。……そうかもね。…ありがとう。電話かけて良かったわ」
「いえいえ、またお悩み事がありましたら、いつでも」
「ええ。でももうお互い八十も近いというのに、こんなことって」
「は、八十っ、ですか。それにしてはお若い」
「アメリカから日本、フランス、香港と活躍してきて、そろそろ疲れたわ。ここらでゆっくりしたいものね。いつも派手な服着て踊ってるんじゃね」
「ダンサーか何かなんですね。がんばってください」
「あ、彼が呼んでるから。さよなら。…なに、ミッ○ー、どうしたの」
「えっ」
「……」
「……もしかして、ミ○ー…。ま、またなんかあったら電話してくださいっ。堂出萌でした」

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