組織のアウトサイダ- 10
ミシンのアームにベッド台を取り付ける作業工程に入った。組長が例の通り、標準作業マニアルによって、作業方法を教えてくれた。作業自体は簡単で、足もとにある、あらかじめ用意されているベッド台を取り、ネジ4本でアームに取り付けるだけだ。組長は5分ほど説明し、この担当の女性を紹介してくれた。女性は作業しながら「岡本です」と挨拶したので「高橋啓示といいます。今週はよろしく」といくらか声を高めて返礼した。啓示は前の工程に置いてあった椅子を持ってきた。ついでに先週、お世話になった女性にも「先週はありがとう」と一言、言った。「どーう、いくらか慣れた?」と尋ねるられたので「まだ、緊張しています」と笑い顔で返事した。私はどうも、まだネジ穴にネジの先を合わせるのが遅いことに劣等感を抱いていた。4時から書いてる作業日報にも、このことに触れておいた。係長が赤のボールペンで「これは慣れるしかないのだ」と注記されていた。30分ほど、岡本さんが作業している方法を見学していたら「やってみる?」と聞かれたので岡本さんと交替してアームを取り「ダッタタ」とコンベヤーが進んでくる、なるべく前方から作業にかかったが、3本ネジを挿入したとき、すでにアームをは次の工程に進んでいこうとしていた。その時、岡本さんが瞬時に、本当に瞬間的に私の背後からネジ込んでくれた。女性も熟練するとすごい技を持てることに、内心驚きの念を感じた。岡本さんが助けてくれなければアームをは次の工程に行ってしまい、私も最後の1本をネジ込むために次工程の女性に寄りかからなければならなくなっていたであろう。もう、次のアームが目の前に来ていた。岡本さんが作業マニアルでは三分間で4本のネジをネジ込めばよいことになっているが、私は5分ぐらいの時間を必要としていた。従って、次に来たアームには岡本さんが私の背後から1分ほどで作業を終了ていた。岡本さんは私に「慣れていないのだから、諦めないで、そのまま席に座って、2本でも3本でもよいからネジ締めをやりなさい。危なくなったら、私が後ろから助けるから」と言って私を励ましてくれた。そうこうしている内に昼食を知らせるベルが工場全体に鳴り響き、騒音は瞬時にとまった。私は汗が額から流れ落ち、気が付いた時には、岡本さんは居なく、出入り口が人々で渋滞しているのを発見した。「あるがまま」と心の中で自分を励ました。その時、長谷川さんが「食事に行こうよ、あとの2人は行ってしまったよ」と言って私を急がせた。食堂は混んでいた。今日は女性陣は手作り弁当を食べながらグループで、まとまり話し合っていて、たまに大声で笑う声が聞こえた。私は疲れていて食欲がなく、ラーメンを頼んだ。他の3人もそれぞれ、思いつきで食べ物を頼んでいた。4人とも無言で食事した。私と同じ心的状況なのかもしれないと思った。食事をしたおかげで4人とも少し元気が出てきた。例の中央通りで、多くの女性をを4人で眺めていた。長谷川さんが「今日、作業を教えてもらっている女性は私のタイプで、楽しいよ。百合の花の様に色白で、うるんだ目は大きく、鼻は女性らしく、高からず、低からずで、形が良くて、作業中にお互いに無意識で触れた手はお餅のようにやわらかであった。作業服からでも胸が山のように膨らんでいるのだから、私服になったら、かなり大きなオッパイしていると思うよ」更に「そのうちデートでもしようと思っている」と言った。大山さんが「ふられるかも知れないよ?」とけん制すると長谷川さんは「男がねばれば必ず女性はついて来てくれると言う信念を持っている」と反論した。

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