いわずと知れた1972年製作の名編「
ポセイドン・アドベンチャー」のリメイク作品である。超豪華客船が突然の大波に襲われ転覆、生き残った乗客たちが力を合わせて船底(転覆しているのでそこだけが海の上に出ている)へと向かう冒険ドラマ。基本プロットはオリジナル通りだが、今の映画には珍しく上映時間わずか98分という短さなので、かなり端折った印象だ。
特に、人物描写の少なさはまるでダイジェスト版のようで、登場人物それぞれのキャラ設定を綿密に行っていたオリジナルと比べると、いかにもおざなり。そうしたまだるっこしい描写はあっさり省略して、豪華客船内部の華麗さを観客に堪能させると、もう出番は終わりとばかりに直ちに津波が船を襲う。CGと巨大セットを組み合わせたと思われるそのシーンはさすがに大迫力で、ここだけはいかにもミニチュア然としていたオリジナルをはるかに凌駕していたが、残念ながら目を見張るのはそこまでで、転覆して後の冒険シーンにさほど見るべきものはなかった。
物語は一種の道中もので、一行は様々な障害をクリアしつつ脱出口を目指すのだが、オリジナル版にあった逆さまの便器など、いかにも「転覆しました」という事実を物語る調度もなく、世界が上下逆さまである、という実感は前作に比べて遥かに少ない。いかにもセット然とした前作に比べ、調度がリアルなだけに余計残念だった。
登場人物が途中で一人ずつ死んで行くのもオリジナルを踏襲しているが、さすがに死に方には多少アレンジを加えている。冒険の始まりで死んでしまう船員(オリジナルではロディ・マクドウォールの役どころ)の死に方など、「カルネアデスの舟板」的発想で新しさを出したかったのだろうが、残念ながら後味の悪さだけが目立ってしまった。
オリジナル版でジーン・ハックマンが演じたスコット牧師に相当する役には、今回カート・ラッセル演じるラムジー元ニューヨーク市長があたるのだが、わずかに消防士として現役時代に英雄的な活躍をした、という説明があるだけで、スコット牧師のような強烈なキャラクター性は微塵もなかった。せっかくカート・ラッセルというあくの強い俳優を起用しながら、拍子抜けするくらいの薄味キャラである。
もう一人のヒーロー、ジョシュ・ルーカス演じる職業ギャンブラーのディランもまたスコット牧師のようなキャラだが、やはり与えられた役割を淡々とこなすにとどまっており、こちらも薄味。ヒーローを二人も設定しながら、そのキャラクター性をほとんど強調しないとは一体どういう了見か、シナリオライターの良識を疑うばかりだ。それからもうひとり、皮肉屋のラッキー・ラリー(ケヴィン・ディロン)という男が登場するのだが、展開の遅れを気にしたのか、冒険の序盤であっさり命を落としてしまう。この手の話には不可欠な不協和音キャラなので、おそらくラスト近くまで死なないのではないかと思っていたので、序盤で落下物に当たってあっさり死んでしまったときには正直驚いた。
それにしても、冒頭の延々と続くポセイドン号を舐めるような描写には恐れ入った。チラッと挿入されるジョシュ・ルーカスのジョギングシーン以外はすべてCGによる作画なのだそうだ。カメラアングルや色調など、少しばかり「
タイタニック」に似ているのはご愛嬌といったところか^^;・・・
★★★