空き家の冒険」で古本屋に変装したホームズがワトスンの医院へやってきて、持っていた古
本を無理やりワトスンに売りつけようとする場面があります。
「―――「英国の鳥類」「カトゥルス詩集」「神聖戦争」―――どれも掘り出し物です。あの
本棚の二段目のすき間は、あと五冊もあればきれいに埋まりますな。」(「詳注版・シャー
ロック・ホームズ全集・第7巻「空き家の冒険」 P202)
このなかにある「カトゥルス詩集」はジャック・トレイシーの「シャーロック・ホームズ事典」(各務
三郎監訳・すずさわ書店)によると
”カタラス、ガイアス・ヴァレリウス Catullus, Gaius Valerius ローマの有名な叙情詩
人”
としかありません。
これしか説明がされてないということは欧米では今更説明するのも野暮なほど有名ということ
で、実際にGoogleで「Catullus」と検索すると89100件もヒットしました。
一体どんな詩集なのか…と疑問に思っていたところ、先日感想文を書くために読んだ「エロイカ
より愛をこめて」1巻で主人公の伯爵の台詞にその詩の一部が語られていました。
〜カトゥルス詩集・第五歌「千のキス」〜 上段・ラテン語、中段・英語、下段・日本語
VIVAMUS mea Lesbia, atque amemus,
Let us live, my Lesbia, and love,
生きよう、ぼくのレスビアよ、そして愛し合おう
rumoresque senum seueriorum omnes unius aestimemus assis!
and value at one farthing all the talk of crabbed old men.
厳格な老人たちの噂話を全部でただの一文に評価しよう
soles occidere et redire possunt
Suns may set and rise again.
太陽は没してまた戻ることができる
nobis cum semel occidit breuis lux,
For us, when the short light has once set,
ぼくらには、短い光がひとたび没するや
nox est perpetua una dormienda.
remains to be slept the sleep of one unbroken night.
永遠の一つの夜を眠るしかない
da mi basia mille, deinde centum,
Give me a thousand kisses, then a hundred,
ぼくにくれ、千の口付けを、それから百
dein mille altera, dein secunda centum,
Then another thousand, then a second hundred,
それからまた千、また次の百
deinde usque altera mille, deinde centum.
then yet thousand, then a hundred.
それから続けてまた千、そして百
dein, cum milia multa fecerimus,
Then, when we have made up many thousands,
それから何千も合計してから
conturbabimus illa, ne sciamus,
we will confuse our counting, that we may not know the reckoning,
それらを混ぜ返そう、分からなくなるように
aut ne quis malus inuidere possit,
nor any malicious person blight them with evil eye,
あるいは誰か意地悪が、にらみをきかせられぬように
cum tantum sciat esse basiorum.
when he knows that our kisses are so many.
こんなに多くの口付けがあると知るときに
http://www.vroma.org/~hwalker/VRomaCatullus/005.html
「ローマはなぜ滅んだか」P150(弓削 達著、講談社現代新書)
う〜〜〜ん。ラテン語でいわれるとステキですが、日本語で同じことを言われると結婚詐欺師
のセリフのようですね。
ヴィクトリア朝時代でこの詩集はどのように使われたのでしょうか?
ワトスンのようなミドル階級の男性は恋人への愛のささやきやプロポーズの言葉の参考文とし
て(というか教養があるところをみせて)でしょうか?
ホームズは…仕事上女性から情報を聞き出すにあたって、自分で口説き文句を考えるのがめ
んどくさいのでこの詩集からテキトーにみつくろって使っていたのかも(笑)

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