
男性4人によるコーラスのなかで、私の1番好きなグループである。
ダーク・ダックスをJALとするならばこのグループはANAと言ったところであろうか(ちなみにJASはボニー・ジャックス)。
ダーク・ダックスがロシア民謡を好み、どちらかといえば「寒い」表現を得意とするのに対し、デューク・エイセスは日本の歌謡やアメリカン・カントリーなど、暖かく明るい表現に長けている。
その日本風暖かさの集大成がこのCDだ。永六輔作詞、いずみたく又は中村八大による作曲がほとんどであり、日本人なら誰でも1度は聴いたことがあるような名品そろいである。
彼らの音楽作りは基本に忠実で、ユニゾンまたはソロで始まり、再現部もしくは3番歌詞で5度に展開していく。だから1番だけ聴いてつまらないと言っていたのでは、岩清水八幡宮に参ったつもりの仁和寺法師状態であり、コーダを聴かずにブルックナーを語るようなもんである。
かく言う私も、「見上げてごらん夜の星を」「上を向いて歩こう」などはもう聴き飽きた、手垢のついた古い曲だと思い込んでいたが、この演奏を聴いてその素敵さを再認識させられた。一見優しそうな、穏やかに聴こえる中にピンと張りつめる、1本筋の通った力強さはどうだろう。やはり本当の名曲は、時代は変わっても人の心に訴えかける普遍的な力を持っているのだ。
その1曲目
見上げてごらん夜の星をは冒頭、いきなりコンセルトへボウのような音色のラッパで始まるが気にしない。再現部の展開は本当に立派だ。
女ひとりは、「きょうと〜おおはらさんぜんいん(京都大原三千院)〜」で始まる名曲である。大学時代はカラオケで大ブレイクしていた。もっともあの頃は井上陽水かいずみたくばっかり歌っていた記憶があるが・・・。ちなみに2番は「京都〜とがのおこうざんじ(栂尾高山寺)〜」3番は「京都〜らんざんだいかくじ(嵐山大覚寺)〜」と続く。もし1番と2番を入れ替えて発表していたら、今頃は高雄が観光名所としてブレイクしていたのかもしれない。
いい湯だなもやわらかい演奏。ドリフターズをアーノンクールとするならこちらはプレヴィン風だ。伴奏は賑やかだがヴォーカルは始終落ち着いている。
遠くへ行きたいはスローテンポ。好き好きだろうが、私としてはもう少しサクサク歌ってもらったほうが雰囲気が出るような気がする。
野風増は若くして逝ったシンガー、河島英五のヒット曲。
筑波山麓合唱団はとてもシラフとは思えない珍品である。
なお1曲だけ
死んだ男の残したものはという、歌詞もメロディーも救いようのないほど暗い作品が収録されている。一体誰が作ったのかと見ると作詞は谷川俊太郎、作曲武満徹。なるほどそうですか・・・。
明らかに場違いなこの曲がなぜ紛れ込んでしまったのかは不明である。
曲も歌も、人を暖かく包みこみ、心を豊かにしてくれる1枚だ。
デューク・エイセス「新世界」 東芝EMI 1992
見上げてごらん夜の星を/女ひとり/フェニックス・ハネムーン/別れた人と/おさななじみ/遠くへ行きたい/いい湯だな/上を向いて歩こう/筑波山麓合唱団/死んだ男の残したものは/美しい親友に/ふりふり寝たふり/野風増/夜明けのうた
詳細・試聴・ダウンロードは
こちら辺り

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