この日、凄腕二人が軽々と即った物件のおこぼれに、覚は預かった。
女は若い即系だが、覚の実力では即るのはおろか、連れ出すことも難しかったかもしれない。
凄腕二人と女の三人が待ち構える薄暗い個室へ、場違いな空気を醸し出しながら、おずおずと覚は現れた。
顔を合わせた四人は、残り時間が短いことをさっと確認。
そして男二人は室外へ去り、汗の匂いの立ち込めるじめじめとした部屋に、しょんぼりと覚と女。
残された二人は、英会話教材の入門編の様な、おざなりの会話を交わした。そして、ほどなく覚がギラついた。
慣れきった女は催春的で、当たり前の様にキス、手万を受け付け、唾液たっぷりのフェラ。
そして、口淫をひとしきりすませると、段取り良く覚は女に大きく股を開かせ、女は覚の挿入を待ち構えた。
ねっとりとした陰鬱な雌豚の膣へ、覚は挿入。
ブラックホールの様な女の膣で、天文学的回数の往復を繰り返し、射精する寸前に覚は宙を仰いだ。
不思議な事に、見上げた仄暗い個室のその天井に、
蜘蛛の形をした不気味な染みがある、と覚はふと気付いたのだった。
蜘蛛の形をした染みは、煙草のヤニと埃で煤けた天井の片隅で、物言わず覚を見下ろしていた。
その呪われた紋様は何故か、年老いていく覚をあざ笑うかのようだった。
・・・・肉体的衰えよりも、精神的衰えが、このところ覚の心を苦しめていた。
激しい心の高揚や、眩しく光るもの、錯綜した世界、若かった頃に羨望したものが、今の覚の目には魅力的に映らない。
消極的に移り変わっていく心の内部の変化が、覚に老化を否応なく自覚させ、覚の神経を痛めつけているのだ。
妖しげな天井の蜘蛛の紋様のせいで、日頃の抑えきれぬ苦しみのフラッシュバックに、覚はこのとき再び一瞬、不覚にも捉えられてしまった。
・・・・そこはかとなく不安を感じながらも、胸の中からそれを払拭し、いつもするように覚は胸の前で十字を切った。
そして神の姿を思い浮かべ、覚は神に深い感謝と敬意を払った。
パスを送ってくれた彼らリベロ、チルの二人の凄腕の姿も思い浮かべ、覚は胸の前で十字を切って、彼らに敬意を表し、白いものをたっぷりと射精した。
凄腕な彼らに覚はいつも世話になりっぱなしである。
面目ないことこの上ない。
・・・・覚はその後、部屋へ帰った。
そして覚は部屋へ飛び込むなり、靴も脱がずに、ひき放しになった黴臭い煎餅布団へと、堕ち崩れるようにへたり込んだ。
息を引きつらせ、肩を震わせて、目に涙をじっと湛えた(たたえた)。
肉体的若さよりも精神的若さにおいて、覚は醜く彼らに嫉妬した。
やり場のない苦しみと無力感に、覚はとことん煩悶し、きたなく嗚咽した。
過ぎ去った時間は戻らず、覚の身に起こる老化は、総て必ず不可逆的である。
過去に覚が愛した女達も、二度と覚の元へ戻らない。
彼女達は若返らない。再び覚に微笑みかけることも、未来永劫、あり得ない。
ただただ、止め処ない喪失感と無力に、覚は打ちひしがれたのである。

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