朝日新聞「萎縮の構図」
「クソガキ」「キモイ」――昨夏に9ヵ月の留学から帰国した後も街を歩けば、罵声を浴び、にらまれた。そのたびに、今井紀明さん(20)は2年前、イラクで武装勢力に捕らわれた後、北海道の実家に届いた104通の手紙を思い浮かべた。「死ね」「税金泥棒」「非国民」――実名は3通だけだった。
1月末、議論の素材にしようよ手紙の一部をブログに載せた。それを通信社が報じた直後、押し寄せる中傷でブログは制御不能に陥った。その夜、ブログに<面と向かっていえる言葉でしょうか>と書いた。火に油、だった。3日間でアクセスは約30万件に。<逆ギレはやめろ><馬鹿の見本です>。
こんなコメントが約6千。夜を徹して目を通すうちに涙がこぼれた。
2月12日、ブログの更新停止を宣言した。
イラク行きは、戦争とは何かを同世代に伝えたいという気持ちからだった。何とか彼らとやりとりしたかった。「お電話ください」の一言と携帯電話の番号を添え、批判的なメールを寄せた約50人に返信した。30人以上から反応があった。紛争地を回った経験から無鉄砲さにあきれたという人。
海外で支援活動に励む友人の名誉のために認めたくないという人。怒りの理由も職業も様々だった。
その1人から、閉鎖をいさめられた。「ここでやめたら、疑惑で埋もれてしまうよ」。
翌日、ブログの更新を始めた。
「事件は自作自演だったのではないか」「特定の政党とつながりがあるのではないか」―― 疑問を解きほぐそうと連日、返信しているが、誹謗や中傷はなくならない。それでも最近、コメントの多くから「とげとげしさ」が消え始めたような気がしている。
(略)
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■国民感情
問題の今井君は事件当時18才。「退去勧告」が出ているイラクに「絵本の材料」を探しにいった方です。「(絵本を通じて)戦争とは何かを伝えたい」といっても、作家でもなくジャーナリストでもないわけで、言ってしまえば「物見遊山」、悪く言えば「売名」を狙ったとしか言いようがないでしょう。
日本の法律では酒もタバコまだ許されない「子供」が、外務省から退去勧告が出されている地域に遊びに行って誘拐されたわけです(途中で大人と同伴しましたが)。しかも救出にあたっては多額の税金が投入されていますから、これを好意的に扱えと言って無理でしょう。
さらに家族が政府を批判するという構図に至っては完全に理解不能でした。これは筆者だけではなく日本国民の多くが共有した感情だったと思います。
日本語には上手い諺がありまして、「この親にしてこの子あり」とか「親の背中を見て子は育つ」と言いますがまさにその通りだなと。端的に言えば「公共心」という概念がない家庭で育ち、学校でもそういうことを教わらなかったのだろうなと思いました。
客観的事実というのはある程度固まっていますから、今井君の行為が「恥じるべき行為」であるというのが日本人の国民感情となります。そういった行為に対する「批判」を、「誹謗・中傷」と受け取るのはいささか都合が良すぎるのではないでしょうか。
■匿名批判の誤謬を分析する
朝日新聞も今井君も勘違いしていると思うのですが、匿名でやってはいけない事は、実名でやってもいけないんですよ。
例えば「脅迫」は、匿名でやっても実名でやっても犯罪です。実際に殴るなどの「暴行」を加えるというのも同様です。名告(なの)れば無罪になるというわけではない。という風に考えれば、匿名投稿に対する批判というのは意味がないことがわかると思います。
逆に、合法的な言論活動においては「匿名」でも「ペンネーム」でも「実名」も関係ありません。ただし、実名でかつ「論者のバックボーン」がはっきりしている場合は、実名のほうが説得力があり有利である、という事に過ぎません。例えば、野球に関しては、その辺りのおっさんの記事よりも、プロ経験者やスポーツライターが書いたもののほうが重宝されるということです。内容が同じなら肩書きで判断するのが人の世の習いというものですから。
ナイター中継みながらビール飲んで枝豆食ってるおっさんが、「匿名」野球を評論しても、それは卑怯なことではありません。おっさんが実名で評論したからと言って、評価があがるというわけでもありません。合法的言論活動においては「匿名」も「実名」もあまり関係ない。これが現実なんです。
■朝日の勘違い
匿名が卑怯であるという理屈は、恐らく、「犯罪的行為をするものは多くの場合匿名である」という理屈からきているのだと思います。しかし、「匿名は多くの場合犯罪である」成り立ちません。朝日新聞はこの点を勘違いしているものと思います。
言うまでもなく本名を告げて犯罪を犯す者はあまりいませんよね。
大体の犯罪者は、偽名を使ったり、犯罪をする際に名告らない。つまり「犯罪者は匿名で活動」している場合が多いわけです。また、社会生活においては「偽名」の使用が違法となる場合もあります。
しかしながら、合法的な活動においては「匿名」で活動しても卑怯なことにはなりません。例えば、車椅子で段差を越えられず困っている人を助ける場合には、名のらず匿名でも構わないでしょう。ペンネームで漫画や小説を書いても違法ではない。芸名で言論活動をしても卑怯ではないでしょう。在日朝鮮人が通名を使っても、法律の範囲なら問題になりようがありません。
このように、匿名だから、名を告げないから卑怯という理屈は論理的には成り立たないのです。
簡単に言うと、問題となるのは「匿名かどうか」ではなく、「行為が適切かどうか」なんです。不適切な行為は、匿名でも実名でも不適切ですし、正当な行為は匿名でも実名でも正当なんです。
■卑怯な行為とは
今井君の場合、受け取った手紙やブログのコメントの中に法律に触れるような、例えば殺すなどの「脅迫的」なものがあれば、それは卑怯なものと言ってよいでしょう。ただし、実名なら許容される程度のものならば、正当な批判として受け止めるべきと言えます。「税金泥棒」「非国民」くらいならば、そういう意見もあるものとして謙虚に受け取る必要があるのではないでしょうか。
奇しくも朝日新聞の後段には、横田めぐみさんの写真展に関する「脅迫」が掲載されています。すでに刑事事件として届けられていると思いますが、これも実名とか実名の問題ではありませんよね。
一応全国紙なんですから、この程度の理屈くらいは理解して頂きたいと思います。
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