■狂牛病―冷静に考えてみよう
輸入牛肉の問題です。いろいなブログでも取り上げられており国会でも論点となっています。筆者の印象では、食に関する問題でもあり
「感情的」に議論されているようですので、ここはひとつネット右翼らしく冷静に考えてみたいと思います。
○BSEの原因は何か?
異常プリオンというタンパク質が原因という説が有力です。
異常プリオンが発生する原因や増殖するシステムはよくわかっていません(よって治療法がない)。
今のところ異常プリオンを含んだ食品を食べることで、異常プリオンが脳や内臓などに蓄積されると考えられています。この異常なプリオンが、正常なプリオンを異常化させていくことによって、脳がスポンジ状態になってしまう。簡単に言えばこれが狂牛病(BSE)です。
※ プリオン病:死の病原体の足取りを追え
http://www5.ocn.ne.jp/~report/news/prion.htm#1
○発症の地「イギリス―1986年」
異常プリオンが脳で増殖することによって発生する羊の病気は「スクレイピー」と呼ばれ(原因はともかく)病気そのものは古くから知られていました。イギリスではこの病気の羊を「肉骨粉」として加工し、牛に与えたことで、異常プリオンが牛に感染し、BSEが拡大したものと考えられています。
イギリスではくず肉や骨、あるいは食用にならない病気の羊などを、大なべで煮沸した後に乾燥させ粉にして飼料としていました。以前は100度以上で煮沸していましたが、1970年代の石油ショック以降は、燃料費節約の為、
煮沸温度を80度に落としたそうです※。
その結果(だと思いますが)、イギリスでは1984年頃から牛の歩行困難などの症状が見られるようになり、1986年にBSE(狂牛病)と命名されました。
※参考 『狂牛病 日本に上陸』 中村靖彦(明治大学客員教授)
http://www.britannica.co.jp/hometop/nenkan/topic10.html
※異常プリオンそのものは加熱で分解することはできませんが、もしかすれば「活性化を抑える」ことはできるのかもしれません。とすればステーキのレアなどはリスクが高く、牛丼などは煮込んでいるのでリスクが低い可能性があります。
○リスクの検討
(1)日本国内で発生したBSEは、外国(感染国であるイギリスなど)から輸入した「肉骨粉」が原因であると考えられています。現在では牛に対する肉骨粉の使用は禁止されているほか、特定危険部位の除去や全頭検査により、リスクは少ないと考えられます。
(2)オーストラリアは牧草で牛を育てていますので、必然的にBSE感染リスクは低いと考えられています。
(3)アメリカでは肉骨粉を牛の飼料として使用することは禁止されていますが、政府の調査管理が行き届いていない為、牛の飼料として使用されている可能性は否定できません。また、鶏糞を牛の飼料として使っていますが、鶏(ニワトリ)が肉骨粉を飼料としている為、床から鶏糞を集める段階である程度の肉骨粉が混入していることは確実です。
※ちなみに、鶏糞そのものに異常プリオンが含まれて入るかどうかは、詳細な調査が行われていないので不明。
○まとめ
現在のところはっきりしているのは以下の三点です。
(1)異常プリオンが蓄積しやすい場所は、脳や脊髄などの「特定危険部位」であることがわかっている。
その他の筋肉(要するにカルビとかロースとか)には蓄積がみられない。
(2)エサを食べる期間と、異常プリオンの体内増殖の期間、を考慮すると、年を重ねるほど体内に異常プリオンを抱えている率が高いと考えられ、
牛の年齢が若いほどリスクは少なくなる。
(3)アメリカ牛は、日本やオーストラリアに比べればリスクが高い。
■輸入反対論とWTO
まず、輸入反対論は日本国民の理解は得られやすいと思います。
端的に言えば「安全が確認できないものは輸入するな!」という正論だからです。
ただし、対米関係やWTOが「不公正な貿易」と判断する可能性については考慮されていません。つまり国際的な理解が得られるかどうかはまた別の問題となります。
科学的・客観的に考えれば、(1)牛齢20ヶ月以下であり、(2)特定危険部位が除去されている、状態であれば科学的には異常プリオンのリスクはかなり低いと考える以外にありません。ちなみに20ヶ月というのは一つの区切りであって、22ヶ月、24ヶ月になればリスクが急増するというものでもありません。
繰り返しになりますが、
仮にBSEを発病していても特定危険部位以外からは基本的に「異常プリオンは検出されない」わけです。牛齢が若く当然発病もしておらず、汚染されたエサを食べる期間も短く、体内で異常プリオンが増殖する期間も短い。
この三点を考えれば、科学的にアメリカ産牛肉が危険であるという証明は困難です。つまり、WTOに提訴されれば、「アメリカ産牛肉を一切輸入しない」という方針は負ける可能性が高いと考えられます。
■現実論
現実論としては、リスクが0と証明できなくとも、客観的・科学的に危険性が証明できない状態であれば輸入せざる得ないことになります。貿易のルールというものは日本単独で決定可能な問題ではないからです。(もっとも、輸入した牛肉を消費者が購入する義務はない)。
客観的・科学的に見て、牛齢20ヶ月以下、特定危険部位除去などの「日米合意」による輸入再開は、まぁしょうがないというか、
民主党が政権を持っていたとしても、この条件なら輸入を再開せざる得なかったものと思います。
ここで重要なのは、アメリカ側が、どのような手段で「合意事項を遵守していくのか」であり、買い手である日本は、どのような方法で「アメリカがルールを守っていることを確認するのか」という点なのです。
■結論
政府としては、
(1)アメリカでBSEが確認され輸入停止措置を取った。
(2)その後二年以上の話し合いを経て、条件をつけて輸入再開となった。
(3)合意事項が守られていなかったので再度輸入を禁止した。
ということで、
日本政府による直接の「落ち度」というものは見当たりません。
合意事項をアメリカが守らなかったことについては、アメリカ側の落ち度であって
アメリカ側(農務長官)が正式に謝罪しています。この状態で政府与党を攻撃している民主党は何を考えているのかわかりませんが、恐らく何も考えていないものと思います。例えば日本国内で食肉業者がなんらかの不正を行ったとしても、それは政府の責任にはなり得ませんよね?
輸入再開にあたっては、「特定危険部位の除去をどのような方法で確認するのか」という点が争点となってきます。急ぐ必要はありませんから、を据えてじっくりと話あうべきでしょう。民主党もアイデアがあれば積極的に提示していけばいい。それが国民の利益になるからです。
輸入条件と平行して、
日本国内での「産地表示」の徹底と、「産地偽装の厳罰化」を行う必要があるでしょう。最終的に消費者に選択権を与えることが大切だと思います。
産地偽装で国民を騙すような業者は論外として、選択権があってなお、米国産牛肉を使用した吉野家に行列ができるようならそれも民意です。
「アメリカ産牛肉を使うな!」とか「食べるな!」と強制する権利は誰にもないのです。
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