日本アルプスを好んで歩く方々はよくご存知だと思いますが、
南アルプスのほとんどの小屋には乾燥室がなく、小屋内にあってほしい洗面もトイレも、小屋の外にしかありません。
乾燥室とトイレの場所は、設備面における質問として最も多い(雨の日は特に)ところなのですが、残念ながら当赤石小屋にも、乾燥室として作られたスペースはなく、トイレも洗面も外にしかありません。
私が山小屋で仕事を初めて昨シーズンで10年たったのですが、トイレと乾燥室に関する質問と苦情は年々増加していて、昨シーズンはそれが特に増えたような気がしたことが気になりました。
南アルプス、特に南部は、他の山域に比べてアクセスの不便さなどから今も昔も断トツに入山者数が少ないところです。
山小屋が利益を生むという意識はなく、昔から「設備も小屋番もレベルが低い」というのが山ヤの常識であったようです。
その為もあってか歴史的に玄人登山者が多く、衣類の乾燥も含め食事諸々のサービスを小屋に頼るという考え方が生まれにくかったと考えられます。
また、南アルプス南部は公営の小屋が多い=設計に管理者の意向が反映されない という残念な事情もあります。富士山と伊豆、という世界的にも有名な観光地を有する静岡県の、役所を含めほとんどの住民は南アルプスが静岡にあること自体に、驚くほど関心がないのです。
ところが近年、登山ブームの再来とともに北アルプスや八ヶ岳など設備の整ったところが多い山域を経験した登山者が、南アルプス南部までも来て下さるようになってきました。
それで、時代の流れもあると思いますが、上記のような質問が増えてきたのかなぁ、と分析しています。
・・・等々、こうして愚痴をこぼしていても、無いものは無いので、これは受け入れる以外に方法がありません。
衣類の乾燥については出来るだけのことはしたいと思っていますが、トイレが外にしかないのは管理者にはどうしようもないのが現状です。「カートリッジをヘリで降ろす式」トイレはコスト・環境面ともに合理的な素晴らしいトイレなのですが、こんなものが中にあったら臭くてたまらないはずです。
まわりを見渡せば大自然、そのただ中に赤石小屋は建っていて、そんな場所に、登山者は自分の足で歩いて来るのです。
ここは水も電気もガスも、当たり前にあるものはひとつも無いという世界です。
登山の醍醐味は、衣食住と行動のすべてに自分で責任を持つことでした。
どういう形態で登山をするとしても、できるだけ自分の力で、できるだけ自立した登山を目指せば、不自由は噛みしめるものではなく味わうものになり、時計に支配された時間ではなく、自然の流れに時間が沿っている世界に浸ることができます。
そして今の私たちは、そのことに無上の価値を見出すことができるのではないかと思うのです。
そんなわけで、経営者は設備の不備を反省・見直しし続けるべきではありますが、利用者の方々にも、「便利な大自然」ではなく、不便だけど味わい深い南アルプスを楽しんでいただきたいし、その為の少しのお手伝いをさせていただきたいと、赤石小屋は考えています。
これは完全なる管理人個人の趣味によるモノです。
公式情報は鞄穴CフォレストH.P.を参考にしてください。
なお、コメントに関しましては管理人下山後しか反応ができません。ご了承くださいな。

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