香港で合気道を続けるにあたっての自分の立場は、実に微妙な位置にある。
現在、自分は香港合気道協会の会員であり、指導員の役目も受けてはいるけれど、それはあくまで出稽古という立場のものであり、自分が帰属するのは船橋合気道道友会で、その門下であるという立場と意識は忘れたことはない。
返還前には、外での経験を持つ稽古生もいくらか存在していたけれど、返還後は、そのほとんどすべてが香港を離れ、今は、香港生え抜きのメンバーがほとんどとなり、外での経験を持つ稽古生は、ほんの数名。 自分のような立場は少数派でもある。
少し前のこと、香港合気道協会の最高責任者から、すでに日本を離れて十数年になるのだから、日本との関係を離れ、香港合気道協会に完全移籍するようにとの話を受けた。
初めて稽古に行った日、また翌日の演武会での師範を見て以来、自分は船橋で師範、S先生、T先生の指導を受け、その技と理念、人となりに少しでも近づきたいと思い稽古をしてきた。 そして、さらには開祖の思想に近づければと願っている。
所属を変えろということは、師匠を変えろということなので、言葉を選びながら、自分がいかに船橋道友会に愛着があり、門下としての思いを持っているかを伝え、どうしても二者択一を迫られるのであれば、香港合気道協会を退会する方を選択するという意思をお伝えした。
自分ではそれでいいと思っていたところ、後日、同氏より、現状のまま香港合気道協会に残り、退会しなくても良いとの回答を受けた。 結果的には現状維持となったけれど、多分、お互いにわだかまりは残ったこととと思う。 少なくとも自分の方には残っている。
そして、多分、自分がビギナーであったならば、何も感じることなく香港の稽古に入り込んで、このような問題は発生しなかっただろうと考える。
しかしながら、すでに自分の理想とそれまでの稽古が頭の中に明確なイメージとして出来ていた自分には、当地での稽古との間に感じるギャップは、次第に大きくなって行ったことも事実。
当初、限られた日本人の子弟を対象に開始した道友会香港の稽古を次第に、自分の思う稽古を実践する場に変えていったのも、そのような経緯から。

人が集まり、組織的な運営が始まれば、そこに政治的な力が発生する。 そして、そのような力が大きくなりすぎると、本来の趣旨からは離れ、楽しさがスポイルされてしまう。
すでに自分は旗の色を明らかにしたので、後のことは捨て置こうと思っている。
すべてのことを円満にと考えるのは、非常に日本人的な考えなのかもしれない。
幸い、旧知のメンバーは自分の立場を理解してくれてもいる。
今回の経緯をS先生にご報告したところ、以下のようなご返事をいただいた。
私からは、「Jetさんグループの和が広がり、
師範の合気道理念を共有出来る、いい稽古仲間が
世界に拡大し、交流できればすばらしい」と考えます。
これ以上の言葉があるだろうか。
大いなる力をいただいたと感じている。